名画に登場した824人全員は名前がある?秘密がここに!
中国美術史上屈指の名画「清明上河図」は、北宋の宮廷画家・張択端氏の筆による絵巻である。その絵巻は、汴河(べんが)の流れに沿って、市民の生活が衣食住にいたるまで細かに描かれ、宋代の風俗を知るためにも絶好の資料である。
しかし、全長約5メートル、縦24センチの画面の中に登場する人物は、いったい何人いるのか?
宋・張択端氏の作品「清明上河図」
一、10年かけてようやく生まれた驚異的な奇書
「清明上河図」が誕生してから800年以来、絵巻上の衣装や建物、食物などにさまざまな研究と取り組んでいる。絵巻に描いた800以上の人物を眺めると、かれらの名前や家柄、人生の出会い等を想像できるだろう。
開封(汴京)城のプラモデル
四川省出身の作家・冶文彪さんは、十数年前、旅行中開封(北宋の都=汴京)と出会い、北宋・開封の東南の下町を描いた名画「清明上河図」にとりつかれた。その後、開封市の景色を味いながら、北宋汴京城の模様を細かく観察し、奇妙な発想が飛び込んできた。なぜ繁栄していた北宋王朝は、絵巻に登場したまもなく、崩壊したのか?この疑問は、奇書をつくる動機となった。
作品を考えるのがまず三年を費やした。その後、『清明上河図密碼』を書き始め、2019年末最終の第六巻が出るまで七年、合わせて十年!冶さんは北宋時代を生きる人みたいになり、自宅の書斎は『東京夢華録』、『資治通鑑』、『三朝北盟会編』、『宋史』、『東都事略』などの宋代古典書籍と関連の大量の文献でびっしり埋まっている。絵巻上の些細な点に取り組むことにより、「清明上河図」の秘密を解く。
二、絵巻上の824人がついに復活
冶さんは、歴史推理小説『824人の四次元事件簿』を通じて、清明上河図のクライマックス、虹橋(にじばし)の場面を絵巻の中心に据え、「謎」の事件を続々と起こしていく。彼は、絵巻上の824人に名前を付けて、登場人物として物語に織り込み、「清明上河図」という二次元(flat、平面)に描かれた824人を三次元、さらには、四次元へ立体的に蘇らせる。
冶さんの微博ブログ(Weibo)より
その824人の中に、餅売りの若者や石炭売りの行商などの小人物がいれば、政治の実権を握る地位の高い大人物もいる。それらの人生の立ち合いは、北宋王朝の誰も知らない秘密を暴き、北宋王朝の滅亡を示す。
三、絵巻上の貨客船、キーとなる
「清明上河図」のクライマックス、虹橋の場面である。虹橋とは橋脚を使わず、木組みだけで支えられたアーチ型の橋。虹の形に見えることから虹橋と呼ばれ、橋の下を船が通り抜けられるように開発されたものである。右からくる貨客船がマストをおろし、虹橋にさしかかる。船首で大声を出して叫んでいる船員、橋から身を乗り出すヤジ馬たち…
「清明上河図」の名場面である虹橋
冶さんによると、その貨客船のことが画家張択端が張り巡らした手がかりだった。この一点から、絵巻に隠れた情報を探し出す。貨客船は虹橋にいままさにぶつかりそうなところだった。実は、その問題の船のことは計画通りに運んいる。
当時、北宋王朝は危険にさらされている。国内で、方腊は東南部で反乱を起こしている。他方、金、遼などの周辺国家は北宋の領土に侵入しようとしていた。北宋に降伏した高麗人も侵略を企ているそうだ。
張択端氏が「清明上河図」を描いたあとまもなく、金の大軍は都の汴京に侵入し、汴京城に放火、大勢の人を殺した。絵巻上の824人の中に、都の汴京戦いで命を失った人がいれば、生き延びった人もいる。
小説を読むと、千年前の中国の暮らし、社会状況などがすぐわかる!そして、令和三年(西暦2021年)にとって、北宋宣和三年(西暦1021年)は他人事ではなくなる。
仙林子