全12冊

『824人の四次元事件簿』―「清明上河図」密碼へのご案内


 

 いまの我々にとっては、900年前の北宋宣和三年(西暦1121年)に起こったことが、他人事ではなくなる。

 世の中は碁盤のようで、人間は自分の人生の物語を持つ碁石だ。それら物語には豊かな人間性があり、恐ろしい人間性もある。人間の心は測れぬものだ。当該小説シリーズを読んだあと、『清明上河図』絵巻上の人物を眺めると、彼らはすべて生き返ったように、自分の物語、自分の生きる時代を語ってくれる。

 北宋王朝の都・汴京の東南。橋にいままさにぶつかりそうな貨客船が、一連の謎の出来事が起きる引き金となる。北宋宣和三年(西暦1021年)清明の日の事件。この事件が小説全体の核で、第1冊から第24冊まで、登場人物がその事件の目撃者として、絶えず語られ、一連の事件との関連が暗示される。

 

 第一冊、第2冊 訴訟裁きの名人である「訟絶」趙不尤とその家族は難しい事件を解決していく。都の汴京に周知された、同じ志を持つ「東水門八名士」と呼ばれた八人組の儒学者の間に間隙を生じたようだ。庶民のためなのか?私利を図るためなのか?何かほかのもののためなのか?謎の香り袋は意外に多くの秘密を引き出す。餅売り若者のつらさ、目の不自由な母親の苦しさ、講釈人の誰にも言えない恋、婦人の絶望、骨董屋の無力さ。いがみ合う進士同士の食事会で、首無し死体が現れる!人殺しは誰なのか?誰が争いを傍観したか?前途のため?愛のため?

 運命に抗う歌妓と楽観的な娘は首無し死体事件を解明できるか?さらに、命の苦しい女性を救済することができるか?驚くべき変身体験は、意外に良縁を結ぶ。しかし、その背後に陰険な企みがあるそう!その二人のつながりがどのような結末を迎えるのか?

 

 第三冊、第四冊 北宋王朝時代の経済、金融、お金(貨幣)の世界。探偵役は、趙不尤に代わり、取引仲介人「牙人」の「牙絶」馮賽。官吏の給料十万貫(一貫=千文)が金庫蔵から、奇妙な形でなくなる。それを仕掛けた人物。朝廷から、百万貫の融資を受け、その返済が滞る。舞台は、揚子江中流の大銅鉱山まで、そして、そこで鋳造された新銅貨十万貫の汴河輸送。西夏と戦火を交える北西地方へと展開する。
 

 第五冊、第六冊 現代中国で最大規模のシリーズ歴史推理小説の第5冊です。皇帝直属の禁軍の「闘絶」梁興は、毒蛇を下宿先に仕掛けられ危うく逃れ、自分の身に起こる事件に翻弄される。糧食倉庫から食料が紛失、それに関連した一般兵士の家族、人生の波乱、悩みがえがかれ、汴京の子どもたちが次々とさらわれる。その母親たち苦悩、そして、次々と起こる殺人事件。
 

 第七冊、第八冊 ものづくり。虹橋を造った父親の跡を継いだ「作絶」張用が活躍する。楼閣が倒れる。奇怪な事件が多発し、探偵役の主人公がなぞ解きに挑む。
 

 第九冊、第十冊 都の南東、襄邑縣(現在の睢縣)の皇閣村に、都落ちし、移り住んだ王一族に待ち構えていた運命。官吏、経済、軍事、製造、ときて、農業。その引き回し役は、「相絶(易の達人)」陸青。その人間を透徹する力は、驚異。易の六十四卦を章立てに、王一族の過酷な運命が描かれる。
 

 第十一冊、第十二冊 大団円を迎える。これまでの登場人物の行方、後日譚、「五絶」すべてが語る。
 

 

 小説を読むと、千年前の中国の暮らし、社会状況などがすぐわかる!

 

 そして、令和5年(西暦2023年)にとって、北宋宣和三年(西暦1121年)は他人事ではなくなる。
 

 神品絵巻「清明上河図」登場した人物の分布図は、ホームページで公開中です。

 

 ダウンロード用のリンクは、https://www.hirogawa.com/information。

 


『824人の四次元事件簿』

 

五絶

相絶:陸青
 

 



訟絶:趙不尤

 



牙絶:馮賽




作絶:張用
 



闘絶:梁興
 


 

 

 

河南省開封市 昔は「北宋王朝」の都城汴京(べんけい)